The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 45



「シャルさー、テストってどんな感じ?」

基礎学の復習がひと段落したところで休憩となったので聞いてみる。

「テスト? 普通にこれまで習ったことのおさらいよ。普通の学校のテストと一緒」

「追試とかあるん?」

「追試というか、資格試験に近いから何度でも受けられるわよ」

「どういうこと?」

これ、資格なん?

「すべての科目はカリキュラムが何段階かに区切られているのよ。来月にある試験はその1段階目。基礎学はわかりづらくて微妙だから錬金術を例にすると、来月の試験に合格したらツカサは錬金術の1段階目に合格したっていう資格を得られるの。それがあれば、そういう仕事に従事できる。まあ、1段階目って微妙だけどね。最低でも3か4はいる」

なるほど。

「シャルの錬金術は?」

「錬金術は1年から3年まであって10段階だけど、全部終わった」

すげー……

何がすごいってそれを中学までに終えたことだ。

「ちなみに、それってどれくらいすごいの?」

「錬金術関係の仕事ならどこに行っても雇ってもらえるくらい。町でポーションを売ってたでしょ? あんな感じで売れるし、自分で店を出しても成功すると思うわね」

さすがはポーションに味をつけられる人だ。

「そっちの道に進めばいいのにって思うのは俺だけ?」

それだけの能力があれば、成功するだろう。

「皆、思うんじゃない? どう考えたってそっちの方が向いてるもの」

トウコと決闘した時に見た攻撃魔法はすごかったけど、シャルって基本的に弱いもんなー……

そもそも性格が戦いに向いていない。

「でも、進まないの?」

「イヴェールの跡取りだからね。まあ、錬金術は趣味よ、趣味」

趣味のレベルじゃない気がする。

「俺も呪学を頑張るわ」

「良いと思う。ちなみに、呪学はものすごく儲かるわよ。呪術師はどこの家も欲しいからね」

「マジ?」

「呪いも解呪も大事だもの」

ちょっとやる気が出てきたぞ。

「上手くいったら高給で雇って」

「自分の家があるでしょ。長瀬はわからないけど、ラ・フォルジュが喜んで迎えてくれると思うわ」

それもそうか。

「その場合、ラ・フォルジュの次期当主のエリク君に頼まれてもシャルを呪わないからな」

「エリク・ラ・フォルジュね……知ってるわ」

やっぱり知ってるんだな。

「気のいい兄ちゃんだからそんなことは言ってこないと思うけど、呪おうとしたらコブラツイストして止めるわ」

「どうも……というか、呪いをかけるのは重罪よ。いくら名門でも普通に捕まる」

そりゃそうか。

俺とシャルが休憩しながら雑談をしていると、ノックの音が聞こえてきた。

「んー?」

『ツカサ、ちょっといいですか?』

母さんの声だ。

「何ー?」

立ち上がって扉を開けると、母さんが立っていた。

「もうすぐお昼ですけど、どうするんですか?」

母さんに言われて時計を見ると、11時半だった。

「あー……どっかに食べに行こうかなー?」

昼食のことを考えていなかった。

「あれだったらシャルリーヌさんの分も用意できますよ?」

うーん……どうだろう?

「シャル、昼御飯はどうする? 母さんが用意するって言ってるけど……」

「え? でも、迷惑でしょうし……」

シャルが伏し目がちで母さんを見る。

「迷惑なん?」

「そんなわけないでしょう。どうせファミレスに行くならウチで食べなさい」

「だってさー」

母さんの言葉をそのままシャルに振る。

「え? でも、私、イヴェールだし……」

「関係ないだろ。俺がそっちの家に行った時に飯も出さんのか?」

「出すわね……」

「じゃあ、いいじゃん。母さん、シャルはパスタが好きなんだ」

ファミレスでいつも頼んでいる。

「わかりました。できたら呼びます」

母さんはそう言って、扉を閉めたのでシャルの対面に戻る。

「私、絶対に嫌われてるわよ?」

「んなことねーよ。顔を見ればわかる」

16年も息子をしていればわかるのだ。

「そうなの?」

「ウチの母親は感情が顔に出るからわかりやすいんだ。この前も2日ほど風呂に入ってないって言ったらガチで軽蔑した目で見てきた」

そう言うと、シャルがとんでもなく軽蔑した目で見てきた……

「冗談だよ?」

お茶目、お茶目。

「お風呂は毎日入りなさい」

「冗談だってば」

「入りなさい」

「はい……」

爺ちゃんの山に行ってたから風呂に入れなかっただけなのに……

その後、昼飯まで休憩することにし、シャルがアルバムを見たがったので見せながら当時のことを話していると、トウコが部屋にやってきた。

「なんかド定番なことしてる……お兄ちゃんさー、あまりアルバムとかを見せないでよ。異性が家に来る時にやる定番のやつだけど、高確率で私も一緒に写ってんだからさー」

小さい頃の写真はほぼトウコと2人セットだ。

これも双子の宿命。

「小さい頃だから別にいいだろ」

「会長、めっちゃ笑ってんじゃん」

トウコに言われてシャルを見ると、アルバムを見ながら眉をひそめていた。

どう見ても、笑いを堪えている表情だ。

「「何がおもろいん?」」

「それやめて」

シャルがそう言って、アルバムを閉じた。

「「それって何?」」

「すごいわね……どうやったらそんなに合わせられるの?」

シャルが感心する。

「双子のシンパシー?」

「合わせようと思ったら合わせられるよね」

その時の感情を言えば、大体合う。

「双子ってそんなもの?」

「知らん」

「まあ、最悪なのは合わせようとしてない時でもたまに合う時だね。高確率で笑われる」

実際、昨日、ユイカは笑ってたからな。

「へー……気付いてないと思うから言うけど、合わせる時の表情がそっくりよ。瞬きまで同じタイミング」

それは知らなかったなー……

「嫌なことを知ったな……」

「ホントね……まあいいや。ご飯だよ」

トウコがそう言うと、シャルが手鏡を取り出し、前髪を整え出す。

「変わんねーよ」

「お兄ちゃん、マイナス5点」

「元から良いって意味だ」

「マイナス10点」

なんでだよ……

「いいから行くぞ。腹減ったわ」

俺達は部屋を出ると、1階に降りた。

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