The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 100



「お守な感じか?」

ユキがいなくなったのでロナルドに聞いてみる。

「気にかけるように親に言われているが、お守って程でもないな。従妹だし、普通に付き合うさ」

「お前の家は?」

「んー? 普通って言えばいいのか? まあ、あいつの家みたいに傾いてはいない。多分、援助もしているだろうしな。こういう時に助け合うのが親戚であり、家族ってもんだろ」

わからないでもない。

まあ、俺は裏口入学で助けてもらった側だけど。

「ロナルド、魔法大会には出るのか?」

フランクが唐突にロナルドに聞く。

「もちろんだ。もし、戦うことになったらよろしく頼む」

出るんだ……

武家の人のなのかな?

「そうか……ツカサ、セドリック、ワニを売りに行こうぜ」

まだ昼にもなっていないが、帰るらしい。

「そうすっかー」

「だね。じゃあ、ロナルド、また寮でね」

セドリックが手を上げると、ロナルドも手を上げ返した。

そして、俺達は来た道を引き返していく。

「ツカサ、お前はロナルドとユキを見て、どう思った?」

歩いていると、フランクが聞いてくる。

「モテそうな奴だなーと目を開けろよ」

どっちかどっちかは誰でもわかる。

「そうじゃなくて、強いと思ったか?」

「ロナルドはやってる奴だな。だが、ユキはわからん。マジでわからん」

ロナルドは何らかの武術を身に着けているのはわかる。

だが、ユキの方はまったくわからなかった。

刀を持っていたが、動き方がやってる人間の動きじゃない。

しかし、一人で森に行き、トカゲを狩れる実力はある。

「俺もわからなかった。なんかアンバランスなんだよな」

確かにそうだった。

雰囲気や格好と動きが違いすぎた。

「目を閉じてるからじゃね?」

「そうかもな……」

フランクが何かを考えている。

「どうしたの?」

セドリックも気になったようで聞く。

「あいつら、ワニを見分してたろ。あれはツカサの実力を測ってたんだと思う」

「まあ、そんな感じはしたね」

「多分、どっちも魔法大会に出てくるんだろうと思ってな」

だからロナルドに聞いたのか。

「負けそう?」

「わからん。2人共、底が見えなかった」

確かに見えなかったな。

「白川家のことを俺の父親に聞いてやろうか? 赤羽も知ってたし、何か知ってるかもしれんぞ」

マイナー仲間らしいし。

「頼むわ。日本の魔法使いは昔から独自路線を行っていたから本当にわからん」

「俺はわかりやすいだろ」

強化魔法オンリー。

「わかりやすいけど、一番わかんねーよ」

「素手でワニを倒したって聞いて、ロナルドもユキも若干、引いてたよね」

ひっど。

「武器を持った方が良いか?」

「お前、そんなにトライデントが欲しいか?」

「僕は武術に詳しくないけど、逆に弱くなるんじゃないの?」

確実に言えるが、持て余すな。

「いっそ杖でも買おうかな。見た目重視で」

「アホなこと言ってないでワニを売って飯でも食いに行こうぜ」

「そうしようよ。大物が獲れたし、いくらくらいになるのか気になってきた」

確かにユキが売れるって言ってたしな。

「よし、売れたら昼飯をおごってやるぞ」

「気前が良いな」

「持つべきものは友だね」

俺達は午前のうちに狩りを終えると、町に戻ることにした。

そして、工業区にやってくると、クラウスのところに向かう。

「クラウスー、いるかー?」

フランクが扉をドンドンと叩いて、声をかけた。

『いるぞー。ちょっと手が離せないから勝手に入れー』

中からクラウスの声で許可を得たので、扉を開けて工房に入る。

すると、クラウスが険しい顔でパソコンを見ていた。

「あんたが鍛冶をしているところを見たことないわ」

パソコンって……

「うるせーなー。今は職人も知識を持って考える時代なんだよ。お前らも得意なこと一辺倒にはなるなよ。無知は搾取されるぞ」

そういえば、元先生でしたね。

「俺は大丈夫」

「お前が一番、心配だが……」

「失礼な。親がおるわい」

「将来の話だよ、バカ。いつまでも脛をかじる気か?」

元ニートには辛い言葉だぜ。

「頼りがいのある従兄もいるぞ」

エリク君!

「どこまでも他人頼みなのがすげーわ。お前は賢い嫁さんをもらえ。それが一番だし、手っ取り早い……で? 何か用か?」

クラウスがパソコンの操作をやめ、顔を上げる。

「忙しかった?」

「そこまででもねーよ」

「そっか。じゃあ、ちょっと頼まれてくんね? ワニを狩ったんだわ」

「まあ、お前らがウチに来る理由はそれだろうけど、ワニって……」

クラウスが呆れる。

「湖は飽きたから川に行ったんだよ」

「だろうな……まあいい。とりあえず、出してみろ」

クラウスがそう言うと、セドリックがワニを出した。

「でかっ! お前、よくこんなのを仕留めるなー……」

クラウスは驚きながらもワニをまじまじと見分し始める。

「すごかろう? 瞬殺だぞ」

「マジ?」

クラウスがフランクとセドリックを見る。

「こいつ、マジでバケモンだぞ。人間の動きじゃねー」

「見ればわかるけど、素手で倒してる」

2人がそう言うと、クラウスが呆れ切った顔で俺を見てきた。

「お前、何しに学校に通ってんだ? それで食ってけよ」

また言われた!?

「勉強に決まってるだろ」

「あー、うん……しかし、ワニかー……」

クラウスが再度、ワニを見る。

「売れない?」

「いや、売れると思うが、クマの比じゃないくらいに時間をもらうぞ」

「どんくらい?」

「ひと月くらいかな」

かかるなー。

「そんなに時間がかかるの?」

「肉は早い。珍味として売れるくらいだしな。時間がかかるのは皮とかだ。専門の業者が鑑定したり、売り先を見つけないといけない」

うーん、まあ、ひと月くらいなら……

「ちなみに、いくらくらいになる?」

「悪いが、こればっかりは専門外すぎてわからん」

「この前の熊より安いってことはない?」

「そりゃねーよ。っていうか、この前の熊は安すぎだ」

12万だもんなー。

まあ、腐ってたから仕方がない。

ジョアン先輩が用意したものだから俺的にはラッキーだったけど。

「とにかく、声をかけてよ」

「わかった……しかし、お前らが川に行ったということはヘンゼルトの嬢ちゃんもか?」

イルメラのことだ。

「いや、イルメラ達は山の方で鳥狩り」

「そっちは楽だな……ってか、夕方に来るわけだ。そっちの方にも声掛けしておくか」

「おねがーい」

「はいよ。売値が決まったら連絡する」

よしよし、売れそうだ。

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